ISOのLCA関連規格の最新動向

 

 

 

当コラムは筆者がエキスパートとして参加しているISOのLCA関連規格の最新動向をまとめております。なお、筆者が執筆しているLCAF 通信のNo.96の内容を追記・編集し直したものです(LCAF通信は、一般社団法人日本LCA推進機構のメール会員登録をしていただいている方へお送りしています。メール会員の登録はこちらからできます)。

 

一般社団法人LCA推進機構

理事長 稲葉 敦

 

 

1.2025年に発行された規格

 

〇 ISO/TS 14076:2025(Environmental techno-economic assessment — Principles, requirements and guidance) 

 eTEAと呼ばれているLCAと産業プラントの経済性評価を無理矢理につないでいるとしか思えない規格です。2025年6月に発行になりました。WG(Working Group)も議長とセクレタリを含めても毎回5~6人しか集まりませんでした。実際に使う人がいるのかどうか非常に不安です。 

 

〇ISO/TS14064-4 (ISO 14064-1 の適用に関するガイダンス) 

 旧版はISO/TR14069:2013です。旧版にあった「Avoided Emission(削減貢献量)」の定義と解説を省いてTS(Technical Specification(技術仕様書))にして2025年11月に発行になりました。以下で述べるように本体のISO14064-1が改訂中です。このTSもそれに合わせて改訂されることになりますね。 

 

〇ISO14064-1 AMD1(ISO 14064-1の補遺)

 ISO/TR14069:2013 に含まれていた「Avoided Emission(削減貢献量)」の定義と解説の補遺を発行する作業が終盤になってキャンセルになり、内容をISO14064-1の改訂に含めることになりました。しかし、ISO14064-1をGHGプロトコルとのダブルロゴにすることになって、今後どうなるか先行き不透明です。 

 

〇サーキュラーエコノミー(TC323)の規格 

 サーキュラーエコノミーの最初の規格シリーズで残っていた ISO59040:2025(製品のサーキュラリティのデータシート)が2025年2月に発行されました。データをどう整理するかの規格ですが、本体のISO59040シリーズの使用状況のサーベイが始まっているので、関心は低いようです。 

 

 

2.もうすぐ発行される規格

 

〇ISO13662/FDIS(マスバランスモデル)と13659/FDIS(ブック&クレイムモデル)

 ISO22095:2020(加工流通過程の管理アプローチ)の中の「モデル4:マスバランスモデル」と「モデル5:ブック&クレイムモデル」の詳細版です。2025年12月のWGで発行が決まりました。この規格は、以下に述べるISO14021(環境ラベルー自己宣言)やISO14077(マスバランスモデルのLCAへの適用)並びにISO14067(製品のCFP(カーボンフットプリント))などに影響を与えると思います。 

 2006年1月にISO13662をISO22095-2、ISO13659をISO22095-2と番号を変えることになりました。基本の規格であるISO22095:2020との関係を明確にするためです。2026年3月に発行される見込みです。

 

〇ISO/DIS14021(タイプII:自己宣言) 

〇ISO/DIS14024(タイプI:エコラベル) 

〇ISO/DIS14025(タイプIII:EPD(Environmental Product Declaration)) 

 ラベルの一般原則を示すISO14020:2022が発行されたのを受けて、タイプI、II、IIIのそれぞれの規格の改訂作業が行われてきました。14024と14025は既に議論が終わり、もうすぐ発行になります。14024(エコラベル)と 14025(EPD)はラベルを発行するプログラムを運営する組織があるので、ISO22095:2020(加工流通過程の管理アプローチ)の扱いをそれらの組織に任せるという書き方になっていて、もうすぐ発行される見通しです。しかし、14021/DIS(自己宣言)では、リサイクル率(Recycled content)と再生可能素材(Renewable Material)の宣言ではマスバランスモデルが使えると書いてあり、DIS(Draft International Standard)のコメントを処理するオンラインミーティングが続いています。 

 

〇ISO14019-1(サステナビリティ情報の妥当性確認及び検証第1部: 一般原則及び要求事項」 

〇ISO14019-2(サステナビリティ情報の妥当性確認及び検証第2部:検証プロセス」) 

〇ISO14019-4(サステナビリティ情報の妥当性確認及び検証 - 第4部:妥当性確認と検証を提供する機関に対する要求事項)

 ISO/TC207/SC2(環境監査及び関連業務)とISO/CASCO(適合性評価)が協働で開発を進めてきました。すべての議論を終えてISO事務局が発行するのを待っている状況です。「サステナビリティ情報」(sustainability information)の妥当性確認及び検証を実施する際の原則及び要求事項を定めています。規格協会のHPでは「ESGやCSR関連のレポートや情報開示などに活用されることを意図しており、IAASB(International Auditing and Assurance Standards Board/国際監査・保証基準審議会)の保証業務基準や IESBA(The International Ethics Standards Board for Accountants/国際会計士倫理基準審議会)の倫理規定を反映させる内容で、開発が行われている。」と解説されています。 

 妥当性確認及び検証全般についてはISO/IECの17029があり、その中の「サステナビリティ情報」を扱う規格です。一方、「環境」の妥当性確認及び検証についてはISO14065:2020(環境情報の妥当性確認及び検証を行う機関の一般原則及び要求事項)があります。また、GHGの検証についてはISO14064-3:2006(温室効果ガスに関する声明書の妥当性確認及び検証の仕様並びに手引き)もあるので、使い分けが問題になると思います。今後の使われ方に注意したいと思います。

 なお、 ISO14019-3(サステナビリティ情報 – 第3部:妥当性確認プロセスの原則及び要求事項)はCD(Committee Draft)を準備している段階です。 

 

〇ISO/DIS32212(金融機関のネットゼロへの移行計画) 

 正確な名称は「Sustainable Finance - Net zero transition planning for financial institution」です。TC322「持続可能ファイナンス(Sustainable finance)」で作業が進められてきました。名称の通り、ネットゼロに向けて金融機関が何をするかという規格です。金融機関にもScope3が浸透してきましたので、カテゴリー15(融資や投資)を取り扱うということが含まれています。 

 

 

3.現在作業中の規格

 

〇ISO14064-1:2018(組織のGHG)とISO14067:2018(製品のカーボンフットプリント(CFP))

 改訂のWGが始まったとたんに、ISO中央事務局がISO14064-2(プロジェクトの GHG)も合わせた3つの規格をGHGプロトコルとのダブルロゴで発行するということを決めたので、右往左往しています。

 

〇ISO/CD14060(ネットゼロを目指す組織: Net Zero Aligned Organizations) 

 昨年のCOP30を目指して2024年に始まったのにまだCDです。ISO14068-1:2023(カーボンニュートラリティ)が、トランジションの間でもカーボンクレジットを買ってカーボンニュートラルであることを宣言することを認めている規格であるのに対して、ISO14060は将来ネットゼロに向かって努力する姿勢を認める規格なので、トランジションの間にネットゼロにすることは認めないことになっています。ネットゼロへのコミットメントを認証している SBTi と同じ目的と思います。作業開始から3年で発行するという期限に間に合うのか心配です。  

 

〇ISO/CD14077(ライフサイクルアセスメントにおける加工流通過程の管理アプローチ適用のための要求事項及び指針) 

 2024年12月に作業が始まりました。議長のベルリン工科大学のマテアス・フィンケバイナー教授は、「ISO14040:2006 では科学的な方法で評価する」と常に主張し、市場がマスバランスモデルを必要としているという主張の人達と折り合いがつきません。オンラインミーティングでの議論が続いています。次はDISを発行することになると思いますが、どんな文書になるのか、まったく予想がつきません。 

 

 

4.まとめ

 

 製品(ISO14067)と組織(ISO14064-1)の GHG 算定に関する規格の改訂が始まり、それらに影響するマスバランスモデルの規格(ISO13662)やカーボンニュートラルを宣言する規格(ISO14060)の開発、金融機関への普及(ISO13662)が進んでいます。最近の傾向は、そのどれもが「検証」を含む議論になってきていることです。

 一方で、GHGに限定しないISO14077(LCA のためのマスバランスモデル)の規格開発があり、また私は十分にフォローできていませんが、ISO 14054:2025(組織のための自然資本の算定)も発行されています。

 いずれにせよ、2026年もISOのLCA関連規格について、様々な議論や改訂・開発等の動きがあるものと推測されます。